【This Week】週刊フットボールトークVol.85(4/27)
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:先週末は、さいたまダービー・大宮戦でした。試合は、完敗。残念なことに浦和からダービーへの想いを感じることが出来なかった試合でした。試合の入り方が悪く、2失点をするまで、浦和は後手後手になってしまう展開になりました。これを見るについて大宮の方がしっかりと浦和対策を施し、気持ちにおいても一歩リードしていたことが、この展開を呼んだのではないかと思います。
豊田:ナクスタは「大宮サッカー場」時代からの思い入れが深いスタジアム。加えてJ創成期のレッズがギド・ブッフバルトやウーベ・バインを中心に、初めて上位陣を連続して食って見せるカタルシスを演じた場所です。当然、近隣のオールドファンやその家族といったファン層が来場していて、現に私が座ったバックスタンドの一隅にはそういう人たちが多々いました。でも、終了間際に聞こえてきた台詞は「これじゃあ、浦和より大宮を応援したくなっちゃうよねぇ」というもの。
椛沢:大宮サッカー場を舞台にしていた頃のレッズは、相手を食ってやろうという反骨精神がチームにもサポーターにもあり、その雰囲気がサッカー専用スタジアムに木霊していた。当時はテレビ観戦でもその熱気が伝わってくるほどでした。チャンピオンにもなり立場も変わり、同じ状況を創りだすのは難しいことですが、一戦必勝、皆が勝利に向けて闘うという姿勢はいつまでも忘れてはいけないことです。
豊田:こういう古くからのタイプの「URAWAのサッカー好き」が吐露する言葉には注意を払ったほうが良いです。相手サイドには継続的に進めている独自のホームタウン連携があるということ。草の根的な投下でアルディージャ支持層を確保し、レッズには手が行き渡らなかった部分でさいたまエリアへのアピールが続いている証しでもあるでしょう。そういうプロセスを踏んできた方のチームが眼の前の直接対決で相手を見透かし、計算ずくの勝利を手に入れる……。こういう筋書きって、ニュートラルなサッカーファンは嫌いではないはずなんです。
椛沢:かつては名実ともに「圧倒的なホーム状態」にできていた場所が、そうはならなくなった……。
豊田:そういう現実は重く受け止めるべきと思う。いくらミシャを招聘しても、総合力ではカバーできないダービーの意識の“蓄積差”が出てしまった。そんな印象があります。
椛沢:ピッチ上のレッズも2失点をした後は、しっかりブロックを作られて、相手の最終
ラインを崩し切るところまでにはいけませんでした。試合後にたまたま大宮を取材し続けている人に話を聞いたら「大宮はらしくないサッカーをして、ダービーではとにかく勝つというスタンスで挑んで、今季最高のパフォーマンスで勝利をしたのではないか」と言っていました。対する浦和は、自分達のやり方を貫くことが最優先に来たことで、どこかそのやり方を通したけれども勝利は出来なかったのは仕方ないという表情に受け取れました。今季はそのような過程を踏むことがあるとは思いますが、ダービーにおいては、それは許されないスタンスだったのではないかと思います。大宮がそのような姿勢で来て闘ってきたわけですから、勝敗はその段階で決まっていたと言っても過言ではありません。
豊田:1分の1の勢いで準備をしたチームに、34分の1の意識が抜けなかったチームが完敗した……そんな表現をしたサポーターもいたな(苦笑)。
椛沢:試合後にはチームへ初のブーイングが飛び、一部サポーターがバスを止めて抗議をするという事態にもなったようです。サポーター側のダービーへの想いと、クラブ、チームの想いの差がまだ開いているのが正直なところではないでしょうか。そのギャップがこの事態を生んでしまったのではないかと思います。この行動は決してミシャのサッカーへの不満ではなく、ダービーの重要性を伝えたいという行動であったとのこと。そのことを伝えて、最後は「次回のホームゲームでのダービーでは、死ぬ気で闘う」という約束をミシャとキャプテンである阿部勇樹がして、その想いを共有したとのことです。
豊田:気持ちは分かりますが、現状では支持者のその行動とピッチ上に出ているチームの答えのギャップが大き過ぎる。まずは多少のヤンチャもスパイスに感じるほどのイレブンとの同盟を果たさなくては……。恣意行動が逆効果になってしまいます。
椛沢:VIPインタビューでは、『争うは本意ならねど』の著者・木村元彦さんの後編となります。
豊田:ユーゴスラビアの民族紛争を長く取材してきた木村さんの目に映っている浦和レッズとレッズサポーター像。それは今回のダービー敗戦の源を探る上でも、一定のヒントを与えてくれる内容でしょう。ミシャのレッズへの想いを考察する貴重な証言も含まれているので、じっくりお楽しみいただきたく思います。
椛沢:2位浮上ということで、ダービーでは若干の油断、隙が出たのではないかと思います。我々の立ち位置を常に忘れてはなりません。常にチャレンジャー精神で、相手に挑んでいかなければいけません。リーグ戦の流れを考えると、ダービーでの負けを引きずらずに再度気を引き締めて、名古屋に挑む姿勢が求められると思います。GW連戦が始まる、ここで悪い流れにならないためにも、名古屋に全力で立ち向かい勝利を目指して闘っていきましょう。