浦和フットボール通信

MENU

「レッズ2012月刊ライブディスカッション」Vol.5

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。夏場を乗り切り、残り10試合を残して現在3位。上位を維持して終盤戦を迎える。浦和レッズは、現在どのような状況なのか。お話をお訊きしました。(浦和フットボール通信編集部)

Photoby  ©Kazuyoshi Shimizu

優勝を目指す強さはまだない。

椛沢:現在11勝9分4敗の3位という順位で上位をキープしていますが、現状の浦和レッズについてはどう見ていますか。

河合:3位だから結果は出てきていると言って良いと思います。ただ全体の順位は詰まっているし、過去に勝ち点10をひっくり返されたことがあることを考えると油断は出来ない。チームとしてやろうとしていることは、練習の中からでも明確になっているし、選手同士の意思の疎通も出来ていている。試合のゴールシーンなども練習での成果が出ていると思えることが多い。そういう手応えはあります。ただ、FC東京戦とか大宮戦もそうでしたが、あの試合は勝てたよねと思える試合もあった。そういう試合でも優勝できるチームになっているかと言えば、まだなっていない。そこが勝てるようになってくると、優勝が狙えるぞ!というチームになるんだと思う。今は、相手がちょっとやり方を変えたりすると、それに対する対応力がまだないですね。

椛沢:確かに、強いチームかといえば、まだ、そうではないという印象は受けます。

河合:必ず後半に課題が残ってしまうこともある。引いた相手をどう崩すのか、体力が落ちて前からプレスが掛からない時はどうするのか。もちろんシーズンの最初に比べれば選手たちも自分たちのサッカーに手応えは感じてきている。だから悲観することはないし、これを続けていかないといけないと思う。

椛沢:個人的には試合を勝ちきるためのFWの存在が足りないと思います。結果を求めるのであれば、勝負を決められるFWの存在が必要だと思う。現在は、その存在がいないのは確かです。そしてチーム構築中の今にそれが必要なのかどうかという議論も分かれるとは思います。

河合:今やろうとしていることは、ボールポゼションをしながら、コンビネーションで良い形を作って攻めるということ、それは出来ている。ただ勝ちきる力がないのは確かです。

椛沢:サッカーを構築させているのと、結果を出していくのかということに関しては、バランスが難しいところはあると思います。結果だけを求めるには時期尚早な所がある気もします。

河合:元気もワントップをやっていると、プレーの幅が拡がると思う。鹿島戦での得点は、元気らしい右のインサイドでトラップして、イン・アウトしてシュートするビューティフルな形だった。

椛沢:その意味においてもFWを獲ると、その元気が試合に出場できなくなる可能性が出てくる。そう考えた時に、どっちを取るのかというのは難しい選択肢ですね。

河合:ミシャさんはそれを両方やろうとしているし、努力はしている。うん……、その結果が3位なのかな。

Photo by © Kazuyoshi Shiimizu

頂点を目指すために必要なこと

椛沢:11試合負けなしの状況で、アウェイの神戸戦で負けて、その後、鹿島、清水とライバルチームに連勝が出来ました。加えてこの2チームに今季2勝でした。

河合:これは大きいよ。嬉しかったね。清水戦も後半運動力が落ちたところはあったけれども結果が出たのは良かった。この後に仙台、広島との対決がある。それまでにチームがもっと熟成をしていかないといけない。

椛沢:先日のさいたまダービーでは引き分けに終わり、悔しい結果に終わりました。あの試合では、サッカーを貫き過ぎて、勝ちに拘って欲しい部分もありました。

河合:そうなのよね。でもミシャ監督も選手も、自分たちのサッカーで崩せるという自信があったんじゃないかな。シュートがポストに当たったりして、運に見放されたという言い方もするんだけど、運も実力の内。引き込む力はほんのちょっとのことで変わる。

椛沢:去年のアウェイ福岡戦の柏木のゴールは、まさに引き込んでいたゴールだったと思いますね。その雰囲気があのダービーにあったかというと疑問な部分はある。

河合:そう、運を引き込む強さ、リズムがあると思う。ダービーでは、本当の良い形で良いサッカーが出来ていただけに悔しい……。

椛沢:序盤の出来が良すぎたために、先制点が決まった後は、スタジアム中の雰囲気が今日は圧勝するんじゃないかという期待感があり、それによる隙が出た気がする。それでもゴールが決まらず、前半終了間際に失点したために、逆に絶望的な雰囲気があった。

河合:あとは、崩せるだろうという甘い考え方があったのかな。そういう甘さを捨てて行かない限りは勝てない。優勝するチームは、あのような試合はモノにして行かないといけない。ただ、選手たちも最後まで勝ちたいと思ってプレーはしていたと思う。それは前回のダービーの時とは違っていたことはある。

椛沢:試合後にサポーターにブーイングを受けている時に納得しない仕草をしているのは良くないと思いました。それだけのコメントを試合前に選手たちはしているわけですから。この試合は内容どうこうではなく、勝利だけを求めているということを本当の意味で理解しなければいけない。

河合:坪井とか加藤は、本当に悔しがっていたよ。加藤はあの失点について「僕が守りきれなかった」と言っていた。「ボールの勢いと自分が飛んだ距離とシュートの弾道で届いたと思った。止めていてもおかしくなかった」とも言っていた。きわどいシュートが決まる時はそんなもんなんだよね……。

椛沢:ダービーの試合では交代策でももっと勝ちに行く姿勢が見たかった。

河合:なぜ小島秀仁を入れたのか、ポポはなぜあの位置だったのか。私は梅の位置をサイドに出して、ポポをシャドーに置いて点を獲るぞという交代が良かったのではないかと思う。小島も可哀想だった。あのポジションで相手が引いた中でどうすれば良いのか、どうしたいのかが明確じゃなかった。秀仁はあんなもんじゃないし、もっと出来る子。ミシャからすると、一人少ない相手に対して、相手が引いても崩す自信があったんだと思うけれども、交代策に関しては必ずしも良かったとは言えない。

ミシャ監督は常日頃、レッズは育成も求められていて結果も求められているのは難しいことなんだと言っている。それはそうなんだけど、浦和のプライドがあるし、ダービーはアウェイの試合ですごく悔しい試合をしたわけだから、結果をもっと求めて欲しかった。柏木選手が言ってくれたのは、「今回の結果は悔しいけど、この勝ち点1を最後は笑いに変えようよ」と。最後に笑いに変えるということは優勝して皆で笑おうということです。残り10試合、どう戦っていくのか。育成をしつつ、上を見つつ、どう戦っていくか。

椛沢:そういう意味では、今後に向けても良い教訓になった試合だったのではないでしょうか。頂点を目指すには、こういう試合に勝てないとだめだよと。

河合:チームとしてある程度出来上がってきた。しかし、ほんのちょっとしたことで失点をしている。後半になると運動力が落ちる。集中力が欠ける。疲れてくると判断力が落ちるということを教訓として、更にそこをカバーするプラスアルファとして途中交代で入ってきた選手は何が出来るかとか、うちが先制してリードしている時に相手が点を取りに来た時にどうするのかとか、今まで勝てなかった試合、勝ちきれなかった試合で学んできたことを残り10試合で生かさないといけない。夏前はCKの失点が多かったけど、そこは改善されてきた。だから選手たちも課題はもちろん意識はして試合をしていると思います。

Photo by © Kazuyoshi Shimizu

レッズのつぼみは、咲いているのか。

椛沢:プラスアルファの部分では、試合に出場しているメンバーは、ほぼ固定されている。固定しているのは、それ以外のメンバーと差があるからなのでしょうか。

河合:固定すればするだけ熟成度が高いよね。この選手が総取替になるとバランスは崩れてしまうかもしれない。ただ大宮戦の前に見た紅白戦では、うちはACLでも行けるようなチームじゃないかという期待感があった。ランコがワントップで、ポポと達也がシャドーにいて、左のウイングにウガで、右は矢島。秀仁がワンボランチで、野田、水輝、野崎、岡本の4バックだった。このチームは悪くなかった。

椛沢:確かにやろうとしていることが見える時間が増えてきているとは思う。ただ、それが持続しないのと、相手に対応された時に対する対応が出来ない。前半がすごく良いのに、後半違うチームになってしまうのがその特徴的なシーンです。

河合:レッズはJの中でもアクチュアリングタイムが長い。つまり、ほとんどボールが外に出ないので、相手がそれで疲れてくれれば良いけど、うちもつかれてしまっている。これから涼しくなってくると動けるようになるんじゃないかなと思うのだけど……(笑)。ミシャさんは常に次の展開を予測しろと指示を出している。考えて動けと。疲れて来ると脳の動きも遅くなってしまうので、そこでの判断力は問われると思う。

椛沢;繋ぐことに拘り過ぎずに、ボールを蹴り出すことをミシャが許容しているのは、浦和に来てからだそうですね。広島時代は繋ぐことに拘るあまりにミスが起きて失点するシーンも多かったとか。結果が出ているのは、この辺りの浦和を意識しての采配もあるのでしょうね。

河合:ボールを蹴って、そこでキープするか、相手に跳ね返された時にセカンドをしっかり取れる所にポジションを取れば良い。今の時間帯は流れが悪いし、危険だから逃げようとやっていくのか、繋げられるから繋ごうと思うのか、そこの判断力も少しずつ出来ているとは思う。練習を見ていても、相手がサイドのスペースを消されたら、ダイレクトで中に入れるとか、中を固められたらマイナスに入れてミドルシュートを打つとか。様々な状況を予測した練習も行われています。

椛沢:このコーナーでは、度々レッズの状況を花のつぼみに例えてきましたが、今のレッズのつぼみはどのような状況でしょうか。少しは咲いてきてはいますかね。

河合:今年のつぼみは、ある程度は咲くけども満開にはならないかな(笑)。満開は優勝という意味です。時間帯によっては花が出ている時がある。大宮戦の前半は咲いていたと思うし、あのような試合がずっと出来ていれば強い。満開になる時は、試合を通して常に、毎試合出来ること。相手がどのようになろうが、自分たちのサッカーが出来ること。2006年に優勝した時は負ける気がしなかったよね。

椛沢:確かに負けてもおかしくない試合でも勝ちきる力が優勝した時にはあったと思います。そういう意味で今のチームはまだまだ物足りない部分があると思います。

河合:去年を考えれば、ミシャ監督一年目でここまで進歩したことだけでも良しとすべきなわけだから、ここは焦らず、ドンと構えて崩さず、直接対決で勝ったとしても浮き足立たずにやっていくしかない。今季は、やっているサッカーを続けていて、同じ絵を書こうとしている姿勢はよく見える。それを続けていくしかない。

椛沢:去年が全く上手く行かなかった中で、新しいシーズンを迎えて、誰もがやり直すしかないと思えたのが、逆に新しいことを受け入れる意味では良い環境だったのではないかと思う。ミシャという指導者の力もあって、誰もがこの監督についていくしかないと思えたのではないですかね。それが3位という結果に繋がっている気がします。

河合:それはそうかもしれない。だから、ここから残り10試合も自分たちがやっていることを貫いて結果が出れば良しとすれば良い。チームとしてのまとまりも非常にある。ピッチ外のことで、槙野が来てパフォーマンスをするためにTシャツを作ったりするじゃない。サッカーはコミュニケーションが大事なので、ピッチ外のことで話し合って違う一面を見せているコミュニケーションのとり方がチームの団結力にも繋がっているかなと思う。これをしたら絶対に勝って着ようという団結力がある。これは今までのレッズではなかった光景。

怪我をしている直輝がTシャツを着てきたのも嬉しかったね。直輝は恥ずかしがっていたけれども、あのような所に出て、苦しいリハビリをしているけれども、絶対にこのピッチに返ってくるという気持ちにもなるだろうし、皆が待ってくれているということもわかったと思う。そんな良い影響もあると思う。見方によっては、そんなことをしているなら、サッカーに集中しろよという声もあるかもしれないけれども、サッカー以外でのプラスアルファでのコミュニケーションになっているのかなと思う。こいつはこんなに性格が細かったのかとかサッカーだけではわからない選手同士の性格が見えて、仲間内でもケアの仕方が変わったりもしているみたいです。槙野は本物の浦和人になって欲しいという思いはある。でも彼は一生懸命だよ。

椛沢:パフォーマンスをやることで、そんなことをしているから、失点しているんだとか負けるんだという声が出るリスクもある。あくまでピッチでのパフォーマンスが第一にあって、それ以外のものが複合にあるわけですから。

河合:それは選手達も感じている。それが在りきの中で戦っていると思う。

椛沢:終盤戦に向けてレッズへの期待することを最後に教えてください。

河合:レッズのつぼみが満開になるといいなあ。ここまでを見ると勝つも負けるも自分たちだから。自分たちの手で満開に出来たら良いですね。

(浦和区にて)

 

 

ページ先頭へ