浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.112 (11/1)

何かが足りないセレッソ大阪戦。URAWAのサッカーとは?

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢;先週末は、セレッソ大阪を埼玉スタジアムに迎えての一戦でした。ベガルタ仙台との一戦に敗れて、上位に食らいつくための重要な一戦でしたが、スコアレスドローに終わってしまいました。32,000人という観客数もそうですが、どこかこの一戦の重要さというものがスタジアムから感じることが出来なかったと思います。その空気がそのままピッチに反映されてしまったような試合でした。全体の空気感としてチームもそうですし、サポーター各々も仙台に負けて目指すべき目標に、ボヤけた所があるのではないでしょうか。残り4試合を残して非常に危険な雰囲気を感じました。

豊田:こういう言い方は相手に失礼かも知れませんが、双方の立場とかイレブンのコンディションを引き比べると、いまのセレッソに埼スタで勝ちきれないレッズには失望があります。ゲームの流れの中でボールの保持やチャンスメークで圧倒したことは事実。しかし相攻守切換えの精度や球ぎわのせめぎあいなどでモチベーション的にもセレッソが本来のチーム力とはかけ離れた状態にあったことも明らかです。今季終盤は上位チームに取りこぼしが多く、ここ数試合に低調なゲームを消化してもACL圏内には残っていますが……。率直な印象を言えば、このチームパフォーマンスでJ制覇を争ったり、アジアの舞台を目ざすことには違和感さえ感じてしまう気分です。

椛沢:試合後にも「不満足な内容だった」という声が多かったのは事実ですね。ただ、ゲーム内容だけを見れば、自分たちのサッカーを貫いて、それを表現して、決定機もしっかり作った。しかしそれを決めきれなかった。それがこの結果になったということなのだとは思います。攻撃陣がブレーキという言い方も出来ると思いますし、何かそれを決める雰囲気というものも弱かったように思えます。先程も言ったように何か燃えたぎるものがなかった。熱気を帯びた試合というものとはかけ離れた試合になってしまいました。

豊田:サッカーにあり勝ちなことではあるけど……とりわけレッズは長い間、こういう「勝負どころで力を発揮できない」部分に悩み続けてきました。それを克服できないことは残念です。山田暢久選手の適応力には感嘆・感謝するしかありませんが、現状で言えば特に鈴木啓太選手ら軸となるべきベテラン勢に改めて奮起を促したいですね。個人的にも彼らと過ごしてきたレッズ戦史の経験は価値あるものにして行きたいという思いが強い。かつてのレッズには、ピッチ上にもスタンド側にもそういう歴史を自らの手で覆そうという気概がより色濃くあったと思うので。

椛沢:確かに今までゴール裏を中心としたスタンドがチームの雰囲気を無理やりにでも変えて流れを変えてきた歴史がレッズにはあると思います。何度もそれで勝利をしてきた経験があるから、その力はただの”自己満足”ではないという実感もあります。今のスタンドはピッチの出来に反応するだけのスタンドになっている部分もある。自分たちから流れを変えるんだという気概が今こそ必要だと思います。広島、仙台も引き分けに終わり、上位チームもほとんど勝ち点を積み上げられずに終わったので、幸いに順位変動はほとんどありませんでした。しかし清水が勝ち点1差まで詰めてきました。最後の最後に清水に抜かれるのだけは避けたい。そんな状況は許しがたいです。

豊田:イレブンには、あくまでも「結果」を以ってプレーヤーである自分たちに回答が返ってくることをキモに銘じるべきでしょう。くり返しになりますが、これは私たちサポーターにとっても同じこと。優勝は難しくなってもJの上位争いをする体験をもっと楽しみ、積極的に体現するパワーを持ちたいです。

椛沢:今週はナビスコ決勝があり、リーグ戦はお休み。水曜日には敵地、等々力陸上競技場で川崎フロンターレ戦があります。最終ラインのセンターを常に張ってきた永田がハムストリングの肉離れで今季絶望の報道があるなど、終盤戦にきて選手たちの疲労も見えてくる時期ですが、総力戦で乗り切ってもらいたいと思います。セレッソ戦でも途中から出場した山田暢久のポテンシャルの高さは改めてみんなが実感したところではないでしょうか。残り4試合、さらに強い気持ちを持って、戦い抜いてもらいたい。相性の良い「等々力」で久しぶりの勝利を勝ち取りたい所です。

豊田:ところで知り合いのサポーターの方々から、先のタウンミーティングに関する幾つかのメールをいただきました。会場での話題にピックアップさせてもらった「浦和南高校、最後の全国制覇」、やっぱり憶えておられる方が複数おられる様子。「あのゲームは自分も国立で観た」「懐かしい」とのメッセージをいただきました。さらにあのゲーム展開をなぜ私が詳細に憶えているかを訊ねられたのですが……当然のことながら、ゲーム展開すべてを記憶しているわけではありません。あらゆるルートを頼って調べるのです(笑)。こういう記録が風化しないうちに、浦和の高校群の王座復帰を待ちたいと思います。自著(『我らが街に凱歌は響き』流星社刊)に書いた通り、何より鮮明に憶えているのは静岡学園に1点差までつめ寄られた時の松本暁司監督(当時)の表情ですね。自分の観戦歴の中でも、あれほどのゴールシーンがあったにもかかわらず指揮官の様子ばかりが甦るゲームは他にありません。

椛沢:浦和と静岡の頂上決勝を国立のピッチで見る。これはホームタウンの人々にとって忘れられない記憶になる出来事だったからこそ、今でも語り継がれるゲームだったのだと思います。2008年にFC浦和が全国制覇を果たした時のホームタウンの人間として誇らしい気持ちになったあの感覚に似ていたのでしょうね。

豊田:ホーム浦和が目ざすサッカーの志向性に関する感想も頂きました。県内の中学校で教鞭をとり、サッカー部監督をしておられる方なのですが。やはり「URAWAのサッカーは人間教育の一環」という言葉を復唱されていますね。こちらは、レッズというクラブがどうとらえようとホーム浦和のサッカー観は変わらない、と(笑)。いかにも志の高い地元指導者の方のご意見が綴られていました。

椛沢:それがこの街が育んできたサッカーの街の文化ですから、簡単に変わることはないのでしょうね。タウンミーティングで吉野監督がおっしゃっていましたが、浦和出身のプレイヤーは指導者になってから活躍する方が多いそうです。これは「サッカーは人間教育の一環」という部分に起因しているんじゃないかと思いました。先日、毎年恒例となった「浦和4校OB会」でお話をお伺いした、サッカー殿堂入りをした南高OBの永井良和さん、浦和西高校OBの今井敏明さんも共にプレイヤーだけではなく指導者としても活躍されている方でしたね。このレポートは追って公開をしていきますので、お楽しみください。

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