浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.114 (11/22)

高校サッカー選手権埼玉決勝。首位広島に快勝!Come on Super達也!

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:高校サッカーでは、先週末に決勝戦が正智深谷と浦和東で行われて、埼玉県代表校が正智深谷に決定しました。接戦を勝ち上がってきた浦和東と、強烈な攻撃陣を擁して勝ち上がってきた正智深谷の対戦となり、浦和東の野崎監督も戦前から1週間相当な準備をしないと無様な試合をしてしまうとコメントしていたので、野崎先生がどのようにこの1週間選手たちをまとめてくるのかを注目していました。

豊田:近年の各大会、選手権予選でコンスタントに準優勝やベスト4の実績を残している正智深谷は、いまや県北を代表する有力校でしょう。詳細にプレーを追うのは今予選が初めてでしたが、全員の基礎技術の高さとボールへの集散の速さが印象的でした。傑出したキーマンや大柄選手を揃えているわけではありませんが、守りの技術や効果的なカウンターで戦局を変える熟練度等は県内トップレベル。風に乗った超ロングシュートで不運とも思える失点で追いつかれた後も、自分たちの流れをしっかり掴み直す冷静さも持っている。派手さはないけど相当に鍛えられたチームという印象を受けました。総体準優勝校の武南をまじえてのトーナメントを勝ち上がり、県北勢の価値ある出場権を勝ち得ただけのことはあります。

椛沢:期待通り、浦和東イレブンも粘り強いサッカーを見せて、正智深谷に自由を与えないサッカーを展開しました。失点場面はロングボールからの個人能力を使われての失点ということで、致し方ない部分があったかと思います。それでも後半にラッキーな形での同点ゴールを奪い、リスタートから幾度も正智深谷を追い詰めましたが、寸前の所で勝利を得ることができませんでした。野崎監督も「プラン通りの試合だったのに……」と試合後に非常に悔しい表情を見せていました。

豊田:PK戦の負けは仕方がない。東高らしい粘り強いゲーム運びも見せ、期待通りの熱戦に持ち込んでくれたと思います。ただ、延長終了間際からは両軍ともPK戦要員である専門GKを完備していましたね。予選終盤から全国大会まで、こういう備えは確かに必要になってくるのでは? 選手権はその場で決着をつけなくてはならない一発勝負ですから……。小島時和監督は、国士舘大OBでゴールキーパー出身。かつて浦和レッズのコーチを務めた柱谷哲二さん(水戸ホーリーホック監督)と同期だそうです。それにしても、この県内南北対決は興味深かった。県北のサッカー史としては児玉高校が総体準優勝などの健闘を見せた時期がありました。OBには三菱重工の天皇杯制覇(1980年度)などで活躍した永尾昇さん(元三菱重工MF 法政大学OB 78年JFL新人王)などがいます。正智イレブンはその流れを汲んだ児玉郡に拠点をおくFCコルージャ出身のプレーヤーが主力を占めている。さまざまな意味でクラブチームなどユース年代のプレーヤーたちの活動環境が、高校サッカーの趨勢にも大きな影響をおよぼす時代になったようです。

椛沢:コルージャの代表が正智深谷のコーチングスタッフに入るなど、高校とクラブチームの連携が実った成功例のひとつですね。非常に鍛え上がられた選手たちが揃ったチームだと思います。それだけに公立高校のプライドとして野崎監督はこの一戦に拘っていたと思います。しかし公立高校にとっては不利な状況になっているのは間違いないですね。このままでは私学との差は開く一方ではないでしょうか。そのあたりの公立高校の復興についても取材と提言を続けていきたいと思います。
さて、レッズも注目の一戦。サンフレッチェ広島戦でした。首位広島をホームに迎えての一戦ということで、試合前からサポーターが試合を盛り立てて、Lフラッグを数多くはためかせて、選手入場と共にゴール裏には、エンブレムを象ったビジュアルを展開しました。今まで以上に細かい表現をしたビジュアルは、まさに世界レベルだったのではないでしょうか。それに応えて選手たちも躍動しました。

豊田:ゲーム後に知り合いの友人グループが広島サポーターとの交歓会をやるというので、挨拶の意味も含めて本誌紹介に伺って来ました。初の年間リーグ制覇に挑むということで、東浦和の会場は紫のレプリカ姿もかなりの数。「広島さんは我々の降格時の対戦相手。移籍戦力や森さんの功績も含めて…」と言いかかった途端に、「自分たちは修道高校後輩です!」との力強い挙手が数本上がりました(笑)。広島からは飛行機便で、広島の育成拠点になっている吉田高校近く在住のファンや、ビッグアーチ近隣に住んでいるという兄弟連れのママとかもいましたね。とにかく埼玉スタジアムのあの応援には驚いたそうで、「関西でのアウェー経験では、ああいうコレオも大声量のサポーティングも見たことがない」とコメントしていました。

椛沢:状況がどうあれ、この試合に勝利したいという思いがこもって、史上最高傑作ともいえる今回のビジュアルパフォーマンスがゴール裏では展開されました。”大声量のサポーティング”については、広島戦に限っては思ったより声が出ていなかったというのが私の実感なのですが……(苦笑)。他のチームに比べて声を出して応援する層は厚いのかもしれません。試合は、ミシャが6年間指揮を取ってきた広島が相手ということで、ミラーゲームが予想されましたが、それを逆手にとって、リスクを負ってでも前線からチェイスをかけたレッズが、序盤からリズムをつかみました。広島は首位のプレッシャーもあって、レッズの勢いに押されます。41分の先制点は攻守に獅子奮迅の活躍をみせた鈴木啓太から逆サイドにいた梅崎に綺麗にパスが通ると、見事なトラップから倒れ込みながら梅崎がシュート。待望の先制点を奪います。このまま前半を終えますが、先制点により、よりプレッシャーのかかった広島に対して、レッズは大きな優位に立ちました。61分には、「モーゼの十戒」のごとく、海が割れたかのように鈴木啓太の前のコースが空き、そのままシュートをして追加点を決めます。これで勝負がありました。ホームでは実に8月の鹿島戦ぶりとなる勝利。ホームゲームらしい最高の勝利で試合を終えました。

豊田:暢久はすごい出来でした。ゲーム中、佐藤寿人選手との駆け引きをずっと望遠で追っていましたが、途中からは寿人選手の首をかしげての苦笑いの場面が多くなった。マンツーマンは完璧だったと思うし、坪井に指示を送りながらボールを奪うや悠然とサイドへのロングフィードを決める姿にスタンドの暢久ファンは狂喜していましたね。啓太も久方ぶりのビッグプレーだったと思います。失礼ながら、あんなに大きな啓太コールと応援歌が埼スタに響いたのはいつ以来でしょう(苦笑)。

椛沢:彼らに加えて、坪井、平川とベテランの意地が見られた試合でしたね。レッズのニュースでは、田中達也選手が今季限りでレッズとの契約を結ばないというリリースがされました。未だに彼がピッチに出ると期待感で雰囲気が変わります。それはこれまでレッズで作ってきた実績に裏付けられたサポーターたちの信頼の証だと思います。ひとつの時代を創ってくれた達也がレッズを去るのは寂しい思いがありますが、別れが来るのもフットボール。惜しくも昇格を逃しましたが、横浜FCで素晴らしい活躍を見せてくれている堀之内のように、新天地でもう一花咲かせてもらいたいと思います。

豊田:レッズの最盛期への道を象徴するプレーヤーですからね。多くのサポーターが言うとおり、初のナビスコ杯制覇(2003年)のゴールはレッズ史に欠かせないメモリアル場面と思います。ただ個人的には、降格とJ2の苦闘を経てJ1に戻ってきたレッズが国立競技場で当時全盛だったジュビロ磐田と対戦したゲーム(2001年前期)が忘れられない。満員のスタンドが小野伸二の配球を受けて、スラロームのようなドリブルで磐田の守備網を混乱させるルーキーのプレーに騒然となったことを憶えています。他チームであろうと復活を果たして欲しいし、行けるとも思う。やはりアタッカーは出場機会が安定しないと長期のコンディションは整えにくいし結果を残すことは至難。舞台さえ与えられれば可能性は大きいのではないでしょうか。

椛沢:今週末は最後のアウェイゲーム、鳥栖に乗り込んでのサガン鳥栖戦です。ホームで滅法強い鳥栖、そしてチケットも完売近く、今季最高の盛り上がりになると予想されています。間違いなく強い気持ちで乗り込んでくる鳥栖に対して気持ち負けをせず、広島戦で見せてくれたような積極的な試合運びで、挑んで欲しいと思います。

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